【知財実務オンライン】「特許裁判例事典第4版」(知財塾)で新たに掲載した重要特許判決紹介(中村合同特許法律事務所、高石秀樹)
更新日:3 時間前
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分類:特許
論点:明細書作成・翻訳 / サポート要件 / 実施可能要件 / 明確性 / 進歩性 / クレーム解釈
HP掲載日:2026-09-29
【知財実務オンライン】「特許裁判例事典第4版」(知財塾)で新たに掲載した重要特許判決紹介(中村合同特許法律事務所、高石秀樹)
1 動画全体の中心的メッセージ
明細書における「発明の課題」の設定が、サポート要件、実施可能要件、進歩性、新規事項追加、クレーム解釈及び充足論の全てに影響する。
したがって、単に分かりやすい日本語を書くという話ではなく、
• サポート要件を満たしやすくする
• 引用発明との動機付けを否定しやすくする
• 分割・補正の自由度を残す
• 将来の被疑侵害品をクレームに取り込みやすくする
• 不要な限定解釈を避ける
という各目的から逆算して、課題、効果、実施例及びクレーム文言を選択すべきである。
2 実施可能要件・サポート要件(5分56秒以降)
• 「~からなる」「~と~から合成される」等の文言は、その文言だけで排他的な意味に決まるのではなく、明細書記載の課題・技術的意義との関係で解釈される。
• 複数の部材からなる発明では、発明全体を一括して見るだけでなく、各部材について実施可能性を検討する。
(中略)
• クレームの極端な端部に実施困難な態様があっても、その極端な態様までクレームに含まれないとして、実施可能要件・サポート要件が肯定される場合がある。
• 明細書で細かな有効数字を設定すると、その精度で測定可能な条件の記載が要求される。
• 発明の課題を「従来技術の改善」とすると、実際に改善できることまで求められる。他方、「新たな構成又は代替手段の提供」とすれば、当該構成を提供できることによって課題解決を説明しやすくなる。
• 課題を実施例に即して限定的に設定すると、サポート要件を満たしやすくなるだけでなく、引用発明との課題の相違を進歩性にも利用できる。
• 数値範囲外との比較例や論文水準の厳密な科学的証明まで、常に必要となるわけではない。
(判決紹介の一部を省略)
• 課題解決に寄与しない副生成物・不純物を後からクレームアップすると、サポート要件違反又は新規事項追加となる危険がある。
(判決紹介の一部を省略)
特に重要なのは、「改善」を不用意に課題としないことと、実施例から確実に認識できる限定的な課題を記載することの2点である。
3 明確性要件(21分54秒以降)
• 正確な測定が困難であることは、必ずしも明確性要件の問題ではなく、実施可能要件又はサポート要件の問題となる。
• 「略」「約」「ほぼ」は、課題を解決できる程度を当業者が認識できれば明確とされ得る。
• 他方、どの程度で課題を解決できるのか自体が不明であれば、「ほぼ」等の文言が明確性要件違反となる。
(判決紹介の一部を省略)
(判決紹介の一部を省略)
4 新規事項追加・分割・優先権・訂正(26分18秒以降)
• 発明の課題に直接関係しない付加的構成は、実施例から削除又は上位概念化できる場合がある。
• 分割要件と補正要件は、新規事項追加の判断において同様に扱われる。
• 当初明細書に多数の課題及び構成の選択肢を個別に列挙しておけば、後の分割・補正で利用しやすい。
• 課題解決に不可欠でない構成は、分割・補正時に削除できる可能性がある。
• 当初明細書にない「実質的」等の文言を後から加えることは、得るものが少ない一方、優先権等を争われる危険がある。
• 分割出願の途中の世代に新規事項があると、後続する分割出願も原出願日に遡及できなくなる。
• 分割時にクレームだけでなく明細書本文を変更すると、明細書における新規事項追加によって分割要件違反となり得る。
• 新規事項追加に該当しなくても、訂正・補正による「実質的変更」が問題となる場合がある。
• 従来技術欄の記載は限定解釈に利用される一方、当該記載を根拠とする補正は認められないことがある。
• 誤記訂正は、当業者にとって訂正後の内容が一つに定まる場合でなければ認められにくい。
実務上は、分割時に明細書本文を不用意に変更しないこと、当初明細書に複数の課題・効果・構成を個別に列挙しておくことが重要である。
5 新規性・公然実施・進歩性(45分48秒以降)
• 新規性では、本件発明と引用発明との課題が異なっていても、客観的構成が一致すれば新規性が否定される。
• 引用文献に物質名又は用途が記載されていても、当業者が実施できなければ、引用例適格性が否定され得る。
(判決紹介の一部を省略)
• 展示会で外観しか確認できず、内部構成を知ることができない場合、その内部構成について公然実施が成立しないことがある。
• 出願前製品がクレームの数値範囲に入っていれば、その数値範囲に入るとの認識がなくても公然実施が成立し得る。
• 独占的販売であっても、NDA等の秘密保持義務がなければ公然実施となり得る。
• 引用発明が既に課題を解決している場合、別の解決手段を採用する動機付けが否定される場合がある。
(判決紹介の一部を省略)
• 課題解決に関連する複数の相違点は、個別に分断せず、一体の構成として容易想到性を判断すべき場合がある。
• 一方のパラメータを動かすと他方も変動する場合や、複数の解決手段がトレードオフの関係にある場合には、単純な組合せが困難であるとの主張が可能である。
• 「試みることが容易である」というだけでは、進歩性否定の理由として不十分とする傾向がある。
(判決紹介の一部を省略)
• 相違点が明細書記載の課題と関係しない場合、設計事項と評価されやすい。
6 クレーム解釈・均等・侵害論(1時間5分15秒以降)
• 「~からなる」「実質的に~からなる」の意味は、クレーム文言だけでなく、明細書の課題・実施例との関係で決まる。
• 親出願の審査過程における主張・限定が、子・孫の分割出願にも包袋禁反言として影響する場合がある。
(判決紹介の一部を省略)
• 「調節」「調整」は、単に一定範囲内にあるだけでなく、能動的に変更できる構成を要求すると解釈される危険がある。
• 全実施例に共通する構成は、発明の技術思想又は本質的部分として、限定解釈の根拠となり得る。
• 均等論は構成の置換に限られず、構成の一部を欠く場合にも成立し得る。
(判決紹介の一部を省略)
• クレーム上のパラメータを測定できず、被疑侵害品が数値範囲に属することを立証できない場合、非充足となり得る。
(判決紹介の一部を省略)
7 結論
• 明細書の課題設定が、記載要件、進歩性、新規事項及びクレーム解釈を横断して影響する。
• 課題を不用意に「改善」とせず、「新たな構成・代替手段の提供」とすることも検討すべきである。
• 当初明細書には、複数の課題、効果、構成及び実施態様を個別に記載して、将来の分割・補正の余地を残すべきである。
• 「全て」「必ず」「調整」「調節」「実質的」等の文言は、将来の限定解釈又は新規事項追加の原因となり得るため、法的効果を考えて使用すべきである。
(判決紹介の一部を省略)
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