【知財実務オンライン】『進歩性の論点20個を一つ3分で総ざらい』(著者一同、監修=高石秀樹)
更新日:3 時間前
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分類:特許
論点:進歩性 / 設計事項 / 動機付け・阻害要因
HP掲載日:2026-09-29
【知財実務オンライン】『進歩性の論点20個を一つ3分で総ざらい』(著者一同、監修=高石秀樹)
【本文要約/判決紹介省略】
「進歩性の全て」の著者陣による担当箇所の説明に付された、高石のコメントの要約である。
1.判断フロー:組合せの動機付けと設計事項は独立した論理であり、個別に検討する。有利不利は事案による。相違点と課題解決の相関が乏しいと設計事項とされやすい。動機付け・阻害要因を争う一方、別ルートとして設計事項を主張することも多い。
2.引用発明の適格性:補足コメントなし。
3.引用発明の認定:審決取消事由として認められることが多い最重要点である。特許庁が審査・審判の論理に合わせて上位概念化した認定には、常に反論の余地を検討する。
4.上位概念化:課題と相関する構成は自由に捨象できない。C1をCに広げると課題を解決しないものまで含むなら、C1は捨象できない。構成の抽象化と課題の抽象化を分けて考える。
5.内在特性
平成30年頃には、内在特性を当業者が認識できなかったことを理由に進歩性を肯定する裁判例が比較的多かった。令和3年から令和6年頃は、以前よりやや厳しく判断されているとの実務感覚がある。ただし、基本的な判断枠組みが変更されたわけではない。
6.一体不可分性:構成Cを残すと、その除去・変更の阻害要因を論じやすくなる場合がある。可分性には灰色領域があり、課題との相関と、完全解決・改善・同レベルの代替という課題の水準を検討する。
7.相違点の分け方:別々に認定されても、一方の変更が他方に影響する相互依存関係を主張できる。相違点を埋めた結果の他方への影響を常に検討する。
8.付加・置換・除去:対象構成が引用発明の課題解決に必須又は相関するかが重要である。従属項だけにある構成なら、必須でないとの反論や課題認定の修正につながり得る。独立項・従属項の関係も確認する。
9.動機付け:技術分野・作用機能の共通性は前提事情で、引用発明の示唆はより強い動機となり得る。相違点を埋める文献だけでなく、出願時の周知の課題・技術的要請を示す文献も立証に使う。
10.阻害要因
進歩性の議論においては、主引用例の選定が最も重要である。
主引用発明と本件発明の課題が相反する場合、他の技術を組み合わせても本件発明には到達しにくい。
11.設計変更
設計変更論は、動機付けとは別ルートで進歩性を否定する別個独立の論理付けであるため、常に主張するくらいの心づもりでよい。
これに対抗するには、相違点となる構成が本件発明の課題解決に不可欠であるか、少なくとも相関することを明細書から示す必要がある。
裁判所は、現実に技術的意義があるかだけでなく、その関係が明細書に記載されているかを重視する。このため、出願当初の明細書に、各構成と課題・効果との関係を記載することが重要である。ただし、多数の構成を効果と結び付けると、侵害論におけるクレーム文言解釈や分割出願の柔軟性が損なわれる(本件発明の課題と相関する構成は捨象しにくいため、新規事項追加と判断されやすい。)という副作用が生じ得るため、バランスが必要である。
12.有利な効果
この論点は、特許庁と裁判所との判断傾向が大きく乖離している。
特許庁では、「同質であるが際立って優れた効果(顕著な効果)」により進歩性を基礎付けやすい。
これに対し裁判所では、組合せが容易で構成が同じであれば、効果がクレームアップされている場合などを除き、「同質であるが際立って優れた効果(顕著な効果)」だけで進歩性を認めることには厳しい傾向がある。
裁判で主張する際は、単に「同質であるが際立って優れた効果(顕著な効果)」と表現するより、「従来技術とは異質な課題・異質な効果である」と質的な相違を示す方が認められやすい。顕著な効果が認められるレベルであれば、観点を変えれば、異質な課題・異質な効果と表現することが可能であるはずである。
13.周知技術:技術水準の文献立証には、反対文献で当時の理解が一義的でなかったと示すことが有効である。周知技術の文献群は、相違点を埋める役割と動機付けの役割を兼ね得る。
14.容易の容易:標語に頼らず、各変更が容易でないこと、又は二つの変更を同時に行うことが容易でないことを具体的に主張する。
15.用途・用途発明
侵害鑑定や充足論では、「○○用」という用途記載が発明を特定する意味を有するかを必ず検討すべきである。物の構成が同一で、用途記載が単にその用途に適することを述べるだけなら、用途が発明を限定せず、指定用途以外での使用についても文言充足が成立する可能性がある。
依頼者から「構成は同じだが用途だけが違う」と説明されても、直ちに非充足と判断してはならない。他方、「○○用」という用途記載が発明を特定しない場合、用途以外の残部に新規性・進歩性がなければ、当該請求項が無効理由を有することも併せて検討すべきである。
16.サブコンビネーション
サブコンビネーションは、(2026年7月時点における)直近1年間の特許庁におけるホットトピックの1つである。相手方の装置等との関係によって自己の構成・機能が限定されるなら、その記載は発明の限定事項となり、新規性判断にも影響する。逆に、自己の構成・機能が限定されないなら、限定要素とはならない。
近時は、限定するような記載であるのに実際には構成・機能の限定になっておらず、第三者に不測の不利益を与えるとして、明確性要件違反の拒絶理由、取消理由・無効理由とされる事例が増えている。
高石がこの点について2026年9月に論稿を出すので、欲しい方に提供する。
17.数値限定・パラメータ:課題との強い相関と、その当初明細書への記載が重要な実務上の付加価値である。
18.選択発明
数値限定発明も選択発明の一類型である。上位概念から特定の下位概念を選択する類型では、従来技術と異なる課題及び選択肢との相関を本件明細書に記載していることが多く、進歩性が認められやすい。
列挙された複数の選択肢から1つを選ぶ類型は、選択肢の数だけで決まるものではないものの、選択肢が引用例に個別列挙されていると新規性・進歩性が認められにくい。もっとも、選択したものに固有の異なる課題・効果があれば、別途評価され得る。
19.除くクレーム:当初明示のない除外でも、引用発明との重複回避の補正・訂正が認められる場合がある。「備えることが好ましい」に加え「備えなくてもよい」と、将来除外し得る事項を当初から明記することが重要である。
20.効果のクレームアップ:近時は共通構成の内在効果で独立の相違点でないとして厳しく判断される実務感覚がある。ただし基本的枠組みは不変で、なお検討価値がある。サポート・実施可能要件等への備えも必要である。
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