論点別ガイド:損害賠償・権利行使
損害賠償、差止請求、侵害立証など、権利行使に関する記事を案内する。法分野と事案により検討事項は異なるため、各記事の本文と出典を参照されたい。
【商標】知財高判令和6年(行ケ)10098【健康経営EXPO】<本多裁判長>
*商標法3条1項3号に該当する。⇒拒絶 「健康経営」は辞書に掲載された熟語であり、「企業で働く人たちの健康の維持、増進と組織の健全性を高める経営の手法」を意味する。 「EXPO」は「万国博覧会、展示会」を意味する英単語であり、カタカナ読みの「エキスポ」も日本語辞書に掲載されている。 <取引の実情> 経済産業省が「健康経営」を推進する施策を継続的に実施している。 「健康経営」を主題とする展示会・セミナー・フォーラム等を相当の回数にわたり実施している。
【論稿/不競法】不正競争防止法2条1項1号における「混同」と「営業上の利益」の関係性(横山久芳、パテント誌2023年10月)
1.「広義の混同」の解釈 1号の「混同」には「狭義の混同」(出所の同一性の誤信)と「広義の混同」(出所の関連性の誤信)が含まれるが、2号創設後は、混同のない希釈化・フリーライドの規制は2号に委ね、1号の混同要件は具体的・実質的に判断すべきである。 汚染化のケースについては、2号の著名性要件を事案の性質に応じて柔軟に解釈することで対応し、1号の混同要件を無理に緩和する必要はない。


【論稿/不競法】品質等誤認惹起表示の救済について-景品表示法、独占禁止法における類似規定との対比も含めて(足立勝、別冊パテント2023年10月)
1.景品表示法・独占禁止法との対比 ①景品表示法(5条1号・2号) 優良誤認・有利誤認を規制するが、主に行政処分の対象であり、事業者による差止請求は想定されていない。 ②独占禁止法(19条・一般指定8項) 「ぎまん的顧客誘引」を規制する。 差止請求(24条)は可能だが、「著しい損害」という高いハードルが存在する。 ③不正競争防止法(2条1項20号) 競争者による差止(3条)や損害賠償(4条)が認められており、私法上の救済として中心的な役割を果たす。
東京地判令和7年(ワ)70141【不活化ワクチン製剤】<中島裁判長>
*サポート要件違反(+進歩性欠如) 「血清型が非KG-型かつ非KG+型のラクトコッカス・ガルビエ」には、2021年以降に観察された「Ⅲ型」のラクトコッカス・ガルビエも含まれる。 ⇒本件明細書にはⅢ型を原因菌とするレンサ球菌症に対するワクチン製剤の開示は一切なく、Ⅲ型の不活化ワクチンはⅡ型を起因菌とするレンサ球菌症には効果がない。


【論稿/韓国特許】韓国における域外の取扱いについて(ジョン ウォンギ、パテント誌2023年11月)
韓国の裁判所は、サーバー・組立地の所在地にかかわらず、特許に係る実施行為が韓国内で行われているか否かを中心に侵害を判断しており、属地主義を柔軟に解釈する傾向にある。 1.サーバーが外国にある場合 ①ソウル中央地方法院2007年、2006ガハップ73442) 韓国特許(検索方法)について、サーバーを米国に置いていた事案。
【商標】知財高判令和6年(行ケ)10101【SCANTECH】<増田裁判長>
無効不成立(商標法4条1項10号、15号) 引用商標「SCANTEC」の周知性× ①国内市場シェア 原告が提出したデータは原告の商品全体のシェアであり、引用使用商品単独のシェアではない。 廉価版「WEBSENSOR」等は引用商標ではなく、周知性を基礎付けない。 ②GOOGLE検索結果 検索結果数が多いことから直ちに周知性は基礎付けられない。 ③展示会出展 出展回数は年1、2回程度であり多いとはいえず、原告ブースへの来場者数の証拠もない。
コーポレートガバナンス・コード(2026年改訂版)
<知財関係の改訂内容> 1 成長投資としての知的財産の明記(原則4-1) 原則4-1は、取締役会の役割・責務として「成長投資(設備・研究開発・人的資本・知的財産等の無形資産への投資等)や事業ポートフォリオの見直し」を明記した。 知的財産への投資が、設備投資・研究開発投資と並ぶ成長投資の一類型として、原則本文に位置付けられた。


【論稿/著作権】控訴審・知財高判令和4年(ネ)10019、原審・東京地判令和2年(ワ)24492『トレパク指摘ツイート事件』(久村吉伸、パテント誌2024年2月)
①複製権・公衆送信権について(引用の抗弁) 批評ツイートに画像を添付した目的は批評にあり、批評の対象を示すためにYのイラストを引用することは、引用の目的上正当な範囲内で行われたものとして、著作権法32条1項の適法な引用に当たると判断した。 複数のイラストを添付した点については、原審が「必要性がない」として侵害を認めたのに対し、控訴審は批評目的の正当性を認め、侵害を否定した。


【論稿/著作権】最判令和3年(受)1112『音楽教室事件』(久村吉伸、パテント誌2024年2月)
最高裁は、生徒の演奏について以下の理由を挙げ、音楽教室の支配下にあるとは認めなかった。 ①目的: 生徒は「演奏技術の習得・向上」が目的であり、課題曲を弾くのはそのための「手段」にすぎない。 ②自主性: 生徒は自らの意思で弾いており、教師の指導はそれを「助力」するものにすぎない(強制ではない)。 ③対価: 生徒が払う月謝は「技術教授の対価」であり、「楽曲演奏そのものの対価」ではない。