【論稿/特許】これからの税関と育成者権(外村玲子、パテント誌2024年9月)
1.令和2年種苗法改正のポイント:輸出制限の導入 ①指定国制度(輸出制限の届出):育成者権者が、種苗を持ち出してもよい国(指定国)をあらかじめ届け出る。指定国以外への持ち出しは、原則として権利侵害となる。 ②表示の義務化:種苗業者に対し、海外への持ち出し制限がある旨を包装等に表示することを義務付け、意図しない侵害を防止する。 2.これからの税関手続きと実効性の向上 ①DNA品種識別技術の活用~外観での判別が難しい植物にとって、DNA鑑定は生命線である。


【論稿/特許】不純物クレームの特許性についての検討(松岡徹、パテント誌2024年7月)
公知の物質に対して不純物量のみを数値限定したクレームが、どのような条件で「進歩性」と「サポート要件」を満たすのか? 1.進歩性の判断:従来法の「限界」が鍵 不純物を低減すること自体は多くの場合「自明な課題」とみなされる。そのため、進歩性の成否は「その数値が従来の手法の延長線上で達成可能か」による。
【特許/損害論】知財高判大合議令和5年(ネ)10040【豊胸用組成物】
102条3項の損害額に、消費税を加算しないとした。 =東京地判令和6年(ワ)70333 ≠令和3年(ネ)10037『レミッチ』 (判旨抜粋) (3) 消費税相当額について 前記(1)エのとおり、法102条3項により損害額を算定するに当たり、実施許諾料を定めるに際しては消費税相当額を考慮することがあり得ることを含めた本件に表れた諸般の事情を総合考慮して、被控訴人が本件手術の対価(豊胸代金)として得た売上高に8%を乗じた額とするのが相当であるとするものであるから、更に消費税相当…


【論稿/特許】IoT 時代における国境をまたぐ特許権侵害(前田健、パテント誌2025年別冊No.31)
伝統的な属地主義(特許権の効力はその国の領域内に限られるという原則)を維持しつつも、特許権の実効性を確保するために「柔軟な運用」を提言する。 実施行為が日本国内で行われたかどうかの判断基準として、行為の主体が所在する地だけでなく、「行為の結果地」を重視する。 実施行為ごとに「結果地」を定義し、それが日本国内であれば日本特許権の効力が及ぶ


【論稿/意匠】意匠の新規性喪失の例外適用手続の緩和(笹野拓馬、森有希、パテント誌2025年4月)
1.法改正の背景 <従来の課題>出願から30日以内に全ての公開事実を把握・証明することが困難。わずかな証明漏れにより、自らの公開意匠が原因で拒絶されるケースが散見された。 <改正の概要>最先の日に行われた一の公開行為を証明すれば、その後の同一・類似意匠の公開は証明不要。 2.審査基準の主な改訂ポイント ①証明対象となる公開意匠の認定 「証明する書面」には公開意匠の写真貼付欄が新設された。


【論稿/中国意匠・米国意匠】中国、米国を指定国とする意匠の国際出願の留意点(意匠委員会、パテント誌2025年4月)
1.米国指定時の留意点 意匠特許(DESIGN PATENT)の実務米国では意匠は特許法で保護されるため、クレームの明瞭性が極めて重視される。 当初図面が不明瞭な場合、後からシェーディングを追加する補正は新規事項追加」とみなされるリスクが高い。 DESCRIPTIONの記載~機能的な表現や物品の用途に関する詳細は削除を求められる傾向にある。 また、ディスクレーム(権利範囲からの除外)の記載が推奨される。
東京地判令和6年(ワ)70129【箱型船】<杉浦裁判長>
*被告は、対象製品への関与を否認している。 ⇒「具体的態様の明示義務」なし ⇒立証不足で、非充足。 対象製品において、「pHセンサ」及び「原液供給装置」の存在及び位置は不明である。 特許法104条の2(具体的態様の明示義務)については、『被告は、箱型船である被告各製品の製造販売を否認すると共に、被告各製品に対する被告の関与も不明であるとして否認ないし争っているところ、被告による被告各製品の製造販売や関与を裏付ける証拠は甲8陳述書しかなく、これを認めるに足りる客観的な証拠はな…
【論稿/特許】メタバースにおける発明の実施/仮想空間における「実施」を現実社会における「実施」と評価できるか?(松下正、パテント誌2025年別冊No.31)
1. メタバース空間と知財制度の現状 特許庁の指針: 「現実と仮想の双方で同様に機能するプログラム(ゲーム等)」には効力が及ぶ可能性があるが、形状に特徴のある物品を仮想空間で模倣しただけでは、原則として保護は及ばない。 Cf.商標法では画像データとしての商品類似性が問題となり、意匠法では物品性がネックとなる。 2. CS関連発明以外(有体物)への展開 物理的な「薬」や「筆記具」などの発明が仮想空間で表現された場合、単なる画像データであれば実施には当たらない。


【論稿/意匠】部分意匠と全体意匠の類否判断の境界(意匠委員会、パテント誌2025年4月)
1.全体意匠と部分意匠が類似すると判断されるための4要件(意匠審査基準) ①用途・機能の共通性: 両意匠の物品等の用途・機能が同一または類似であること。 ②部分と全体の対応: 全体意匠の用途・機能と、部分意匠の「クレイム部分」の用途・機能が同一または類似であること。 ③位置・大きさ・範囲: クレイム部分の位置、大きさ、範囲が、当該分野においてありふれた範囲内であること。 ④形状等の類否: 全体意匠の形状等と、部分意匠の「クレイム部分」の形状等が同一または類似であること。
【著作権】東京地判令和6年(ワ)70368<中島裁判長>
【論点①】公衆送信権の侵害なし 字幕翻訳者が「オールライツ・クリア」という条件で翻訳業務を請け負った。 ⇒交渉経緯や文言の通常の意味に照らし、少なくともDVD販売とTV放送等の利用許諾が含まれる。 【論点②】氏名表示権の侵害あり 「オールライツ・クリア」の合意に、氏名表示権(著作者人格権)を行使しない旨の合意も含まれない。 【論点③】放送事業者等の過失なし 膨大な作品数を扱う事業者が、直接の契約相手からの表明保証(権利処理完了の保証)を信頼したことには過失がない。