【論稿/特許】翻訳者の立場から見た明細書で避けてほしい用語-特に「自社」、「自装置」、「自車両」(倉増一、パテント誌2025年3月)
1. 「自社」と「他社」の問題 <問題点>:英文翻訳時に its own company や an own company といった文法的に誤った(own は所有格代名詞を伴う必要がある)英語が当てられるケースが多い。 <改善案>:最初の言及では 「ある会社 (a company)」、以降は 「その会社 (the company)」 とする。内部的なニュアンスであれば 「社内 (in-house)」 を検討する。
【論稿/人格権等】声紋の法的保護について(大塚理彦、パテント誌2025年5月)
1.人格権と「声紋権」 現行法上、肖像権は憲法13条の幸福追求権を根拠に認められている。 2.パブリシティ権 〔ピンク・レディー事件〕最判は、肖像等の顧客吸引力を排他的に利用する権利を認めた。 3.著作権法と不正競争防止法 AI開発段階における学習(著作権法30条の4)や実演家の権利(録音・録画権等)だけでは、声の「質」や「作風」の模倣を十分に防ぐことは困難である。 韓国の事例を参考に、不正競争防止法での対応を検討している。


【論稿/特許】訴訟中の被侵害請求項の追加ー訴訟物・時機に後れた攻撃防御方法ー(森本晃生、パテント誌2024年11月)
知財高裁は、請求項の追加主張を「訴えの変更(民事訴訟法143条)」と捉えた原審(大阪地判)の判断を覆し、「攻撃防御方法の提出(同法157条)」に該当すると判断した。 その理由は、特許法が一つの特許出願に対して一つの特許権を付与する基本構造を前提としている点にある。 ある特許権の侵害を理由とする請求において、いずれの請求項を選択するかは、特定の訴訟物(請求権)を支えるための攻撃方法の選択の問題である。 ⇒同一特許の別の請求項を追加しても、訴訟物や請求原因の変更には当たらない。
知財高判令和7年(行ケ)10056【女性用衣料】<森冨裁判長>
*進歩性〇 甲1発明(昔のスポーツブラ)の乳房支持フラップを乳房係合ポケットにオーバーフィットする構成は、本件発明の課題(一つの製品で様々なバストの形やサイズ、補正ニーズに対応できる)とは異なる、甲1発明の課題(ジョギングなどの運動中に、胸が揺れて痛むのを防ぐこと)を解決するためのものである。 本件発明1の出願当時、乳房支持フラップの締め付け位置をバスト下部にし、バスト下部を覆う構成に変更する動機付けがあったということはできない。
大阪地判令和6年(ワ)7055【タクシー配車管理システム】<松阿彌裁判長>
*非充足(均等論も不成立) 構成要件Cの「タクシー(情報)」とは、個々の車両(の情報)をいう。 ⇒本件発明における「ユーザが希望するタクシーを指定した配車確認要求」とは、ユーザーが選択した特定のタクシーの配車を依頼する旨の要求を意味する。 ⇒被告アプリにおいてユーザ端末に示されるものは「タクシー会社を指定する」画面であって、個々の車両の情報が示されるものではない。 +ユーザーが選択するのは特定の車両ではないから、「ユーザが希望するタクシーを指定した配車確認要求」も備えない。
【知財実務オンライン】「特許裁判例事典第4版」(知財塾)で新たに掲載した重要特許判決紹介(中村合同特許法律事務所、高石秀樹)
1 動画全体の中心的メッセージ 明細書における「発明の課題」の設定が、サポート要件、実施可能要件、進歩性、新規事項追加、クレーム解釈及び充足論の全てに影響する。 したがって、単に分かりやすい日本語を書くという話ではなく、 • サポート要件を満たしやすくする • 引用発明との動機付けを否定しやすくする • 分割・補正の自由度を残す • 将来の被疑侵害品をクレームに取り込みやすくする • 不要な限定解釈を避ける という各目的から逆算して、課題、効果、実施例及びクレーム文言を選択…
東京地判令和6年(ワ)70460【シールドトンネルの拡幅構造】<中島裁判長>
*非充足(均等論も不成立) 「仮補填ケース中に充填材を充填する」のクレーム文言解釈について、「仮補填ケース」とは「充填材」を「充填する」対象となる容器を、「充填材」とは隙間や空所を詰める原料を、それぞれ意味するから、「仮補填ケース」と「充填材」とは、物理的に互いに別個独立した部材であると判断した。 本件対象製品の保護ピースは溶接して一体化した単一の部材であるから、「仮補填ケース」と「充填材」に相当する構成を備えるものとはいえない。
東京地判令和5年(ワ)70402【サイフォン雨樋システム】<中島裁判長>
*進歩性〇 乙A25発明と乙A26発明は、技術的アプローチが真逆(前者は乱流発生・後者は乱流防止)で動機付けを欠く。 乙A21発明(通常排水)と乙A25発明(サイフォン式)は技術的思想を異にし、組合せの動機付けがない。 ⇒引用発明(乙A21発明)が流量係数「0.6」という設計上の指標から「従来型の排水システム」と認定し、サイフォン式排水システムとは技術的思想を異にすると判断した。
【著作権】大阪地判令和7年(ワ)3632<松阿彌裁判長>
徳島大学の元教授であった原告が、被告プログラムが、原告の著作物又は共有著作物であると主張した。 ⇒「原告プログラム」の存在自体が認められなかった。原告敗訴。 ①そもそも何が作成されたのか全く不明と言わざるを得ず、著作物としての「原告プログラム」が存在するとは認められない。
【商標】東京地判令和5年(ワ)70505『ゴミサー』<髙橋裁判長>
①被告は、平成4年頃から「ゴミサー」という商品名で業務用生ごみ処理機の製造販売を開始し、商標設定登録を受けたが、平成21年に存続期間満了により消滅した。 ②原告は、平成8年に被告との間で被告商品の販売代理店契約を締結し、被告商品の販売を行っていた。 ③原告は、平成27年に「ゴミサー」の本件設定登録を受け、原告商品の販売を開始した。 ④被告による無効審判請求は不成立。